福島第一原発事故後、各都道県の降下物中放射性セシウムの月間降下量の推移 2011.3〜2015.12
減少傾向にあるが、福島県測定所は時々高濃度の降下物あり! 定時降下物のモニタリングデータ
2016.4.25 アップ グラフをクリックすると拡大PDFになります。
降下物中の放射性セシウムが多いことは大気浮遊物中の粒子状物中の放射性セシウムも多いことが想定されます。CTBT(包括的核実験禁止条約)
高崎観測所における測定結果をグラフ化! 2011.5.31〜2015.9.30 2016.4.25アップ グラフをクリックすると拡大
( 2013.5.5⇒5.19⇒8.10⇒9.21追加修正)
1)福島原発事故で子どもの甲状腺がんが増大
2013年8月20日開催された福島県「県民健康管理調査」検討委員会の資料*によると、東電福島第一原発事故により高濃度に汚染された福島県沿岸部や事故原発から北西方向の地区に住んでいた子どもたち41269人のうち9名の甲状腺がん発症と4名の疑いとあります。普通は100万人に1~2名という珍しい病気と言われていますが、これは普通の罹患率(2名/100万とすると)の約109倍~157倍になってしまいます。
仮に潜伏期間中に見つかった(有病率1名/10万)としても約22~31倍になります。
* 第12回福島県「県民健康管理調査」検討委員会8月20日開催資料2参照
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet;jsessionid=41FA4D09A935F29867FA355AA15ADB7D?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=24809
*東京新聞2013年8月21日は以下のように報道
甲状腺がん確定6人増え18人に 福島の子ども、疑い10人増
「・・11年度の調査開始分で、一次検査が確定した約4万1千人のうち二次検査の対象となったのは214人。うち甲状腺がんと確定したのは9人、疑いが4人。・・12年度分は約13万5千人の一次検査が確定。二次検査の対象は953人で、うちがん確定は9人、疑いが21人だった。」
この2年間で福島の子ども達約17万7千人のうち甲状腺がんの確定は18名、疑いが25名ということになります。
*【子どもの甲状腺がんが100万人に約2名の根拠】国立がん研究センターが公開している甲状腺がんの過去の統計を調べてみました。0~19歳の子供たちについて男子の甲状腺罹患率は100万人あたり0.9人女子の甲状腺罹患率は100万人あたり2.8人であり、女子のほうが男子よりも約3倍罹患数が多いことがわかりました。男女合わせた罹患率は100万人あたり1.8人ということがわかりました。(*下記pdf資料を参照)
以下罹患率の高い女性について統計を見ていくことにします。
*(独)国立がん研究センターがん対策情報センターでは1975年から2007年までの甲状腺がんを含むがん統計を公表しています。統計は5歳間隔の各年令階層毎の集計値になっています。以下の国立がん研究センター がん資料統計(1975-2007)に基づき調べました。
(最新のものは1975年から2008年までの罹患データになっていました。2013.4.17更新)下記URLの 2.罹患データから集計表をダウンロードできます。
http://ganjoho.jp/professional/statistics/statistics.html#02
2)チェルノブイリ事故4年後に女性の甲状腺がんが急増
国立がん研究センターのデータを基に、女性について子どもからお年寄りまで甲状腺がん罹患率についてグラフ化したところ(図−1)のように15歳〜74歳の年齢階層で1990年から数年間増加していたことがわかりました。これはチェルノブイリ事故から4年目にあたり、放射能汚染されたロシア、ウクライナ、ベラルーシ三国における子供たちの事故後甲状腺がんが急増した年数と同じであり、事故による放射能放出との因果関係が想定されます。(図−5)は男女合わせ比較したグラフです、女性が罹患しやすいことがはっきりわかります。この図から1990〜1994年にかけて増加していたことが読み取れます。
3)わかったこと
① チェルノブイリ原発事故4年後、関連3国同様に日本女子の15〜74
歳の年齢層で甲状腺がんの罹患率が増加した。(図−1、図−2、図−4) 子供よりも大人の罹患率増加が目立つ。(図−1、図−2)
② 日本女子全体の罹患数は1990年から3年間が高く1992年が最も高
かった。その後1994年が高かったが、他の年は罹患率が低下した。
しかし2004年から増加傾向にある。(図−1、図−2、図−5)
③ (図−3)より1986年事故以前11年間の0〜19歳の女子罹患数デー
タの平均値は38.7、標準偏差σは9.6だった。1990年の罹患数は71名
であり3σを上回っており有意差があると思われる。
④ (図−3)を見てわかるように1990年から急増した子どもの年齢層
は15〜19歳の階層が著しいことがわかる。しかし(図−4、表-1)の
UNSCEARの統計は14歳以下のものであり罹患数が多いと思われる15
歳以上の年齢については不明であり、なぜ公表しないのか疑問が残る。
*(図−3)と(図−4)から、1990年のチェルノブイリ事故関連3国の
子どもたちの甲状腺がんの症例数は58人、日本の甲状腺がん女子罹患
数は71人になっており日本の数が上回っており、疑問を持ち(図−4)
の出典国連科学委員会UNSCEAR2000報告書を調べたところ年齢は14
歳未満の子どもになっていた。1990年の日本女子の同年令層罹患数は
(図−3)の下の付表から14人であり納得した。UNSCEARがまとめた
数値(表−1)を参考までに掲載する(Totalの区分線がないことに注
意)。
*事故関連3国の甲状腺がん調査地域は、ウクライナ、ベラルーシの
2国は国内全ての子どもたちが対象になっているようであるが、ロシア
はブリヤンスク州に限られていることがわかった。(表−1,図−6)
4)おわりに
年齢にかかわらず女性の甲状腺がんに注意し早期対応を心がけましょう
チェルノブイリ事故当時岩手県と秋田県境の牛乳から1Lあたり15ベクレル程度の放射性ヨウ素が検出されたとの報道がありました(1986.5.12採取)。公開されたがん統計資料では都道府県別については整理されておらずその違いは不明です。当時の都道府県別放射性ヨウ素降下との関連はどうなっているのか今後の調査課題です。
チェルノブイリ事故で放出された放射性ヨウ素と我が国の甲状腺がんの発症との因果関係があると断定することはできませんが、諸状況を見る時否定できないのではないでしょうか。事故炉から8000kmも離れた日本でこのような影響があったとすると、世界の国々でも同様の傾向があったことが予想されます。
福島原発事故により我が国は、チェルノブイリ事故時とは比較にならないほど高濃度の放射性ヨウ素により汚染されました。福島県をはじめとする東北・関東の各県では、甲状腺がんの女性罹患者が原発事故4年後の2015年ころから急増する可能性があります。今から予防原則に立ち対策をたてるべきではないでしょうか。
行政の対応を待っていては手遅れになる場合があります。甲状腺がんは、予後が比較的良好のがんと言われていますが、転移の心配があります。検診を積極的に受けるなど早期発見早期治療など予防に徹しましょう。我々自身そして子どもたちの体調の様子に注意し、早期対応を心がけていきましょう。(永田)
(追加)福島県子どもの甲状腺がん発症の男女比率について
福島県の統計資料によると下図のように甲状腺がん発症・疑い44名の男女比(18歳以下)は18:26≒2:3≒1:1.5であり、国立がんセンター統計男女比(19歳以下)1:3と違うことがわかりました。このことについてその理由については不明です。チェルノブイリとも比較するなど今後の検討課題です。